「駆けぬける歓び (Sheer Driving Pleasure)」 — BMWを語るとき、必ずこの言葉に行き着きます。1916年の創業以来、BMWは航空エンジン製造から始まり、「ドライバーが運転を楽しむ機械」を一貫して追求し続けてきました。
多くの欧州メーカーがFFや横置きエンジンへ移行する中、BMWは長らくFR (フロントエンジン・リアドライブ) と直列6気筒エンジンを主力に据え続けました。これは単なる伝統への固執ではなく、操舵と駆動を分離することで生まれる絶妙な前後重量配分こそが、ドライバーの意のままに操れる挙動を生むという確信があったからです。
3シリーズや5シリーズの広報資料には、必ずと言っていいほど「ほぼ50:50の前後重量配分」が記載されます。これは机上のスペックではなく、コーナリング時のステアリングフィール、姿勢変化の素直さに直結するエンジニアリングの結晶です。
1972年に設立されたモータースポーツ部門「BMW M」は、量産モデルをベースに極限まで走行性能を高めたモデルを生み出してきました。M3 (E30) から最新のM4 CSL (G82) まで、Mモデルは「ストリートで使えるレースカー」というコンセプトを貫いています。
BMWのインテリアは伝統的にメーターやインフォテインメントが運転席側に7度傾けられ、ドライバーが主役であることを物理的に主張します。この一見地味な設計こそ、BMWのDNAを最も雄弁に語る要素です。
整備の現場で長年BMWに触れてきて感じるのは、エンジン・ミッション・シャシーが「走り」という一点で見事に統合されていること。これがBMWの最大の魅力だと私は考えています。